就業規則の項目ごとのポイントと注意点
就業規則の項目ごとのポイントと注意点


●無料のひな型(サンプル)は危険?

就業規則の作成や変更が必要になった時、専門家に依頼せずに、「無料のひな形やサンプルを利用して作成・変更」されている方も多いと思います。

インターネットで出回っている就業規則のひな形を見ると、劣悪なものもあります。一方、無料にするにはもったいない程しっかりしたものもあり、ひな形を利用することがすべて危険ということではありません。

大切なのは、ひな形は幅広く使われることを想定しているため、「一般的な内容でしか作られていない」ということを理解できているかどうかです。

それを理解せずにひな形のまま作成してしまうと、「自社に適していない」「現状に合っていない」就業規則が出来てしまいます。それは、「自社の働き方に適さず法律を犯していた、社員に極端に有利な権利を与えてしまった、最新の法律改正に対応しておらず行政から注意を受けた」などのトラブルに繋がりかねません。

そこで、就業規則を作成する際に重要な「項目毎のポイント及び注意点」をまとめることにしました。参考にしていただければ幸いです。

目的
適用範囲
管理監督者
内定
提出書類及び届出事項
試用期間
人事異動
休職
退職(自己都合、定年、期間満了、普通解雇)
労働時間、始業・終業時刻、休憩、休日(振休・代休)、時間外・休日労働
年次有給休暇
福利厚生(特別休暇・慶弔見舞金)、表彰
安全衛生、災害補償
服務規律と懲戒
給与・賞与・退職金(人件費)/キャリアパス・教育訓練


各項目ごとのポイント及び注意点


【目的】
Q 今回、就業規則を作成・変更することで得たい成果は何でしょうか?

就業規則作成・変更の目的は見落とされがちですが実はとても大切です。「社員10名以上は作成・届出義務があるから?」「労働基準監督署に指摘されたから?」確かにそれもあります。しかし、どうせ作成・変更するのであれば、「職場の秩序を保つため」「社員の快適な労働環境を整備するため」「適正かつ健全な事業の発展を持続させるため」等、より前向きな目的を持って取り組みましょう。


【適用範囲】
Q どのルールをどの社員区分の人たちに適用するのか、が明確になっていますか?

就業規則には、勤務時間、給与・賞与、退職金、休職、試用期間、服務規律・懲戒など、あらゆる職場のルールが記載されています。一方、職場には正社員、契約社員、パートなど様々な社員区分があるはずです。「どの社員区分の人たちにどのルールを適用するのか」を就業規則上で明確にしておかなければ、全ての区分の人たちに正社員と同等の処遇や権利を認めていると扱われてしまう危険性があります。社員区分毎の職務内容、労働条件、非正規からの転換制度などもできる限り記載しておきましょう。


【管理監督者】
Q 役職名だけでなく実態も伴っていますか?

管理監督者は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。この「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されます。例えば、採用や解雇の権限があり、自由に休みや遅刻早退が許され、高額な役職手当を支給されている、様な社員が該当します。


【内定】
Q 内定取消事由の明記と承諾の手続を踏んでいますか?

内定は採用の前段階とはいえ、内定取消事由等を明記した書面をあらかじめ通知し、内容に関する承諾を本人から得ておくことで、後のトラブルを防ぐことに繋がります。


【提出書類及び届出事項】
Q 提出書類・届出事項の内容と報告義務についての記載がありますか?

提出書類や届出事項についての詳細の記載がなければ、社員も「何を」提出・届出すればいいかわかりません。一方、企業側で全てを把握するのは困難なため、変更があった場合には原則社員からの報告が必要である旨の記載をしておきましょう。


【試用期間】
Q 本採用する場合、しない場合の条件が明記されていますか?

仮に試用期間中に多少の問題があったとしても、それだけで本採用しないというのは難しいのが現実です。試用期間が始まる前に、試用期間の長さ、給与、本採用しない場合の事由及び手続き、本採用する場合の条件及び本採用後の労働条件等について、明示して説明しておくことがトラブル回避に繋がります。


【人事異動】
Q 人事異動の可能性がある旨、原則拒めない旨の記載がありますか?

企業が、個々の労働者の同意なしで人事異動を命じるためには、就業規則や労働協約に業務上の都合により人事異動を命じることができる旨を定めていることが必要です。ただし、たとえ記載があっても、業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的が認められる場合、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合等特段の事情がある場合には、権利の濫用に当たり無効になります。


【休職】
Q 休職の事由や期間、復職の条件などが明確になっていますか?

休職は法律上の義務ではありませんが、今や多くの企業で導入されています。但し、休職制度の設計や運用が曖昧だと、いざ対象者が出た時に、長期に渡って企業の負担が重くなったり、休職者の職場での身分が不安定な状態になったりしてしまいます。休職制度を導入・運用していくのであれば、休職の事由や期間、休職中の給与の取扱い・休職者の報告義務、復職の条件、休職期間満了時の取り扱い等について明確にしておく必要があります。


【退職(自己都合、定年、期間満了、普通解雇)】
Q 退職事由ごとの注意点を記載できていますか?

自己都合退職の場合の「申出時期や申出から退職までの引継ぎについて」、定年退職の場合の「定年年齢や定年後の再雇用・継続雇用の取扱いと労働条件」、期間満了退職の場合の「更新の有無や判断基準」、普通解雇の場合の「解雇事由及び手続き(解雇制限、解雇予告)」など、退職事由ごとに記載しておくべきことがあります。


【労働時間、始業・終業時刻、休憩、休日(振休・代休)、時間外・休日労働】
Q 実態に即した始業・終業時刻、休憩、休日などの記載になっていますか?

労働時間については、「始業終業時刻、休憩時間、休日」の他にも、「実態に即した労働時間制を導入できているか」、が労務管理上のポイントになります。また、「遅刻、早退、外出、欠勤時の手続き及び給与の取り扱い」や「振休と代休、所定時間外と法定時間外、所定休日と法定休日」の違いの理解、時間外労働や休日労働をする場合の手続きなどを明確にした上で、社員にも理解してもらっておくことが重要です。


【年次有給休暇】
Q 有給休暇の付与日、付与日数、取得単位の管理はできていますか?

有給休暇の付与の時期や付与日数は法律を下回ることができません。週の勤務時間や勤務日数によって付与日数に差はありますが、週1日勤務のパートにも有給休暇は与えなければなりません。一方、有給休暇の計画的付与や時季変更権といった会社側が利用しやすい仕組みもあります。また、有休を取得する際には「1日」「半日」「〇時間」単位とするなど、有給休暇の取得単位も明確にしておきましょう。


【福利厚生(特別休暇・慶弔見舞金)、表彰】
Q 実態に即した規定がなされていますか?

結婚、忌引の時に会社を休める「特別休暇」や祝い金、弔慰金が支給される「慶弔見舞金」などの制度が一般的ですが、会社独自の福利厚生制度や表彰制度を導入して職場の魅力アップを図る会社も増えてきました。より積極的に定着させていくためにも、制度を導入するのであれば、その種類や活用方法を規則に明記し、社員に伝わるようにしておくことが重要です。


【安全衛生、災害補償】
Q 職場の安全保持のためのルールが明確になっていますか?

職場の環境や社員の安全や健康を守るため、災害防止、健康管理・増進、安全衛生管理の必要性や災害発生時の対応、保険給付や災害補償の内容について概要を記載しておきましょう。


【服務規律と懲戒】
Q 職場で守るべきルールと、それを破った場合のペナルティが明確になっていますか?

自社にとっての遵守・禁止・許可事項の内容と、その実効性を確保するための懲戒の内容・種類(損害賠償含む)を具体的に記載しておくことで、社員の行動規範としての機能が高まります。特に最近トラブルが増加している、ハラスメント、ソーシャルメディアの利用、個人情報についての記載も必要不可欠です。


【給与・賞与・退職金(人件費)/キャリアパス・教育訓練】
Q 実態に即しており、かつ魅力的な制度になっていますか?

「お金」や「キャリア」は社員にとって関心が高いことであり、実態と合っていない場合はトラブルの可能性が高くなります。一方、どんぶり勘定で給与・賞与・退職金の制度設計をしてしまうと数年、数十年先の会社の財政を圧迫しかねません。「選ばれる職場」になる必要性が高まってきている中、将来的な会社のビジョンや業績と連動し、かつ社員や求職者にとっても魅力的な制度設計が今後は特に求められます。


以上、最低限かつ極めて重要な「就業規則の各項目のポイントと注意点」についてお伝えしました。今後の就業規則作成の参考にしていただければ幸いです。



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