●会社における経営数字の役割
経営数字が分からず、経営状態を客観的に捉えることができなければ、自社の重要な経営判断を主観や思い込みに頼らざるを得なくなり、誤った経営判断を下してしまう危険性が高まります。
逆に、会社の経営数字のポイントを押さえておくと、自社の経営状態を客観的に捉えられる様になります。
つまり経営数字は、企業が思い込みに流されず、冷静に、
・過去の取り組みを評価し
・未来の取り組みを予測し
・今とるべき行動を決める
ことを可能にしてくれる"数値的な羅針盤"として、極めて重要な役割を担います。
●人事労務の点から押さえたい経営数字
経営判断において重要な役割を担う経営数字ですが、その種類はたくさんあります。
その中でも、人事労務の点から特に押さえておきたい数字は「粗利(率)」と「労働分配率」の2つです。
●粗利(率)とは?
粗利とは、売上から変動費(材料費、外注費など売上に連動する費用)を引いた数値です。
例)売上100万、変動費20万の場合
→ 粗利80万(100万-20万)
そして、売上全体に占める粗利の割合を粗利率といいます。
例)売上100万、粗利80万の場合
→ 粗利率80%(80万÷100万)
見方を変えると、粗利や粗利率は、仕入れた材料にどれだけ価値を上乗せしたかを示す付加価値の大きさとも言えます。
粗利は、変動費以外の固定費(人件費、家賃、販管費など)を負担する原資であり、粗利以内に固定費を抑えることで利益が残るという構造となっているため、経営において特に注目すべき指標です。
また、この粗利を増やすことで、経営者が望む「利益」と社員が望む「人件費」を同時に増加させることも可能になります。
●粗利(率)を増やすには?
そして、粗利(率)を増やすためには、大きく2つの方向性があります。
<粗利(率)を増やす方法>
@「変動費を抑える」
材料費や外注費を減らすことで、売上は同じであっても、粗利(率)が増えます。
A「付加価値を上げる」
材料費や外注費を減らすことができなくても、それらを基に作り出す商品や提供するサービスの単価(価値)を上げることで、商品やサービスを売った数は同じでも、以前より売上が増えることに伴い、粗利(率)も増えます。
経営者が望む「利益の増加」と社員が望む「人件費の増加」を両立していくためには、この粗利や粗利率に注目することが近道となります。
●労働分配率とは?
労働分配率は、会社が稼いだお金をどれくらい社員に分配しているかを示す指標で、人件費を粗利で割って計算します。
例)粗利80万、人件費40万の場合
→ 労働分配率50%(40万÷80万)
●労働分配率の適正水準の必要性
労働分配率が高いほど、儲けを社員に分配している割合が大きいということになりますが、高すぎる労働分配率は利益を圧迫しかねません。利益が圧迫されると、借入の返済が滞ったり、事業の存続・発展に必要な投資や準備ができなくなってしまう可能性があります。
だからと言って、十分すぎる利益を残すために労働分配率が極端に低くなっていると、会社の利益のわりに給与をもらっていないなどの社員の不信感や不満につながってしまうかもしれません。
この様に、労働分配率は高すぎても低すぎてもトラブルにつながる可能性があるため、自社なりの適正水準を決めておく必要があります。
また、労働分配率の適正水準は、一般的には50〜60%とされていますが、業種や創業年数、事業の成長ステージなどによって異なるので、同じ業界の水準や自社の過去の実績を基に、自社なりの適正水準を把握しておきましょう。
●労働分配率の応用
労働分配率を上手に活用すれば、社員に経営への関心を持たせたり、社員の仕事に対するモチベーションを高めたりする仕組みをつくることができます。
<労働分配率の応用>
@会社全体の労働分配率を固定する
会社全体の労働分配率を固定すると、会社全体の粗利を高めることで半自動的に人件費への配分額も多くなります。そしてこれは、社員に対して、「人件費(給与や賞与)を増やすためには会社全体(チーム)の粗利を高めればいい」ということを伝える強烈かつ具体的なメッセージとなります。
A1人当り労働分配率を固定する
営業職が多い職場などについては、会社全体ではなく社員1人当りの労働分配率(営業受注額などに対する給与・賞与での配分額)を固定するという方法もあります。個々の社員の労働分配率を固定することで、社員1人1人の稼ぎがダイレクトに自分の人件費に反映されるため、個々の社員の仕事に対する成果への意識やモチベーションを高めることにつなげられます。
●会社の数字はわかりづらい
上記の様に、「粗利率」と「労働分配率」は人事労務の点から特に理解しておきたい指標です。
しかし、こうした経営数字を実際の経営に活用しようにも、
「数字の羅列ではどうしても分かりにくい…」
「社員にうまく伝えられる気がしない…」
という方もおられると思います。
そこで、こうした数字の分かりずらさを解消するためにおすすめなのが「図で視覚化する」という方法です。
●お金の流れを見える化する「お金のブロックパズル®」
会社の経営数字は「売上、変動費、粗利、固定費、人件費、その他の固定費、利益」の7つのブロックに分けることで、視覚的なイメージとして捉えることができます。
決算書は数字ばかりでお金の流れをつかみにくいと感じられる方は、下記のエクセルシートの7つのブロックに分かる範囲で数字を入れて、自社のお金の流れをまずはざっくりとつかんでみてください。
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業績や個々の頑張りを人件費(給与や賞与)に反映させる「人事評価制度の作り方」は、以下の記事でまとめております。
【3ステップ】人事評価制度の作り方▶▶
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