実践ノウハウ
実践ノウハウ
作成日:2026/07/01
業務属人化が引き起こすリスクと解消ステップ



「あの人がいないと、うちは回らないかもしれない」

中小企業の経営者や管理職の方と話していると、
こうした言葉が出てくることがあります。

特定の従業員に業務が集中していて、
その人しかやり方を知らない。

引継ぎをしたいと思いつつも、
日々の業務に追われて手がつけられない。

本人が優秀で頼りになるからこそ、
自然とそうなってしまった。

最初は感謝の気持ちだったはずが、
いつの間にか不安に変わっている。

この状態は、
中小企業ではある意味よくある光景です。

しかし、放置する期間が長くなるほど、
組織のリスクは大きくなっていきます。



属人化はなぜ進むのか

業務の進め方や知識・ノウハウが、
担当する人にしか把握されていない状態を
「属人化」と呼びます。

そして属人化は、多くの場合、
誰かが意図して作り出したものではありません

少人数で回している組織では、
得意な人に仕事が集まるのは自然なことです。

その人が責任感を持って取り組むほど、
周囲は「任せておけば大丈夫」と安心し、
さらに業務が集中していく。

本人も
「自分がやったほうが早い」
と感じて抱え込む。

こうして、誰も悪意なく、
気づかないうちに属人化は深まっていきます。



属人化が引き起こす3つのリスク

属人化の怖さは、
日常が普通に回っているうちは
見えにくいことです。

問題が表面化するのは、
何かが起きたときです。

業務がブラックボックスになる
本人以外、何をどうやっているかわからない。
手順もルールもその人の頭の中にある。

結果として、
非効率な作業が温存されていても、
外からは気づけず、改善の提案も
入りにくくなります。

その人の影響力が過度に大きくなる
「自分がいなければ回らない」
という自覚は、意識的にも無意識的にも、
組織内での立場を強くします。

会社の方針に対して
非協力的な態度が見られたり、

周囲を巻き込んで
自分の意向を通そうとする
動きが出ることもあります。

これは本人の性格の問題というよりも、
属人化という構造が生み出す力学です。

突然の離脱に耐えられない
体調不良、家庭の事情、
あるいは本人の意思による退職。

理由は何であれ、
その人が突然いなくなったとき、
引継ぎが整っていなければ業務が止まる。

そして、こうした事態は予告なくやってきます。



「引き継げない」の正体

属人化した業務を引き継ごうとすると、
「この業務は自分にしかできない」
「引継ぎは難しい」
という反応が返ってくることがあります。

しかし、冷静に考えると、
組織の中のほとんどの業務が
本当に引継ぎ不可能ということは
まずありません。

「引き継げない」の中身を分解すると、
いくつかのパターンが見えてきます。

手順が言語化されていないだけ
長年の経験と勘で回している業務は、
本人にとっても「どうやっているか」を
説明するのが難しい。

引き継げないのではなく、
言葉にしたことがないだけです。

自分の価値を守りたいという心理
「誰でもできます」と言うことは、
自分の存在意義を下げるように感じられる。

無意識に、業務の難易度を
高く見積もることがあります。

引継ぎを考えたことがない
「この業務は自分がやるもの」
という状態が長く続くと、それが当たり前になり、
引き継ぐという発想自体がなかった。

つまり、「引き継げない」は事実ではなく、
属人化が長く続いたことで生まれた
思い込みであることが多いのです。



属人化を解消するための3つのステップ

一度に全部を変えようとすると、
本人の反発も大きくなりますし、
受け入れる側の負担も重くなります。

段階的に、
小さく進めていくのが現実的です。

1.最も影響の大きい業務を1つだけ選ぶ
すべてを一度に引き継ごうとすると、
量に圧倒されて動けなくなります。

まずは

「この人が明日いなくなったら、
 最も困る業務は何か?」

を1つ選んでください。

その1つに集中することで、
最初の突破口ができます。

2.マニュアルより先に「もう一人わかる人」をつくる
引継ぎというと
「マニュアルを作る」ことだと思われがちですが、
完璧なマニュアルを作ろうとすると
時間がかかりすぎて頓挫します。

まずは、本人の横で
別の従業員が一緒にやってみる。

「なんとなくわかる人がもう一人いる」
という状態を作ることが最優先です。

マニュアルは、その過程で
少しずつ形にしていけば十分です。

3.引継ぎを「負担軽減」として位置づける
本人に対して
「引き継いでください」と正面から言うと、
「自分の仕事を取り上げられる」と感じて
抵抗が生まれやすくなります。

「業務量が多いと聞いている。
 一部を他の人にも覚えてもらって、
 負担を軽くしたい」

という伝え方のほうが、
協力を得やすくなります。

目的を
「引継ぎ」ではなく
「負担軽減」に置き換えることで、
本人のプライドを傷つけずに進められます。



効率化は引継ぎの中で自然に起きる

属人化した業務には、
本人なりのやり方が積み重なっています。

客観的に見ると
非効率な部分が含まれていることも
珍しくありません。

しかし、これを正面から
「非効率だから変えてほしい」と指摘すると、

本人にとっては
「自分のやり方を否定された」と感じやすい。

効率化は、
引継ぎの過程で自然に進めるのが得策です

別の人が業務を覚える中で
「この手順は必要ですか?」
「こうしたほうが早くないですか?」
という疑問が出てくる。

その疑問をきっかけに見直していくほうが、
摩擦が少なく、結果的に、
改善のスピードも上がります。



組織の主導権を取り戻す

「あの人がいないと回らない」
という状態は、言い換えれば、
組織の主導権の一部が
その人に渡っている状態です。

これは本人が悪いという話ではありません。

属人化という構造が、
自然とそうさせてしまうのです。

だからこそ、
解消に向けた動きは、
個人への対処ではなく
組織の構造を変えるという視点で
進めることが大切です

会社としての方針を明確にする。

引継ぎは個人の善意ではなく、
組織として取り組む業務であると位置づける。

引継ぎを受ける側の従業員にも、
なぜこれが必要なのかを丁寧に共有する。

まずは、
1つの業務、そして、
1人の「もう一人わかる人」から
始めてみてください。

その小さな一歩が、
組織の主導権を静かに取り戻す
第一歩になります。



業務の属人化や引継ぎの悩みは、
仕組みの不足だけでなく、

職場の中にある暗黙の役割分担や
「言い出しにくい空気」から
生まれていることがあります。

「特定の人に頼りすぎている状態を変えたい」
「引継ぎを進めたいけれど、切り出し方がわからない」
「組織として業務の偏りを見直したい」

そうしたテーマを、
制度面と現場の空気の両方から整理したい方は、
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