こんにちは、岸本です。
経営者の一方的な感覚で
「処遇を改善したから大丈夫!」と思っても,
従業員は不満に思っているかもしれません。
そして,トラブルの多くは,
ほんの小さな不満の種を放置たことが原因で
発生しています。
経営者と従業員の満足を両立させる
処遇の考え方を理解し,
その実現に向けて取り組んでいきましょう。
今回は,従業員の不満を
できるだけ発生させないための
「個々の価値観に合った処遇の実践」
についてお伝えしていきます。
■重要なのは価値観
「ウチは相場より高い給与・ボーナスを
払っているから大丈夫」という声が
聞こえてきそうですが,本当にそうでしょうか?
ひょっとすると従業員は,
給与・ボーナスの相場なんてものに関係なく,
自分の感覚で自社の給与・ボーナスが低いと
感じているかもしれません。
また,そもそもお金に対する価値観が低く,
給与・ボーナスの額より「やりがい」や
「プライベートの時間」を重視しており,
もっと業務のやりがいや残業時間の削減を
望んでいるかもしれません。
そんな状態で,いくら
「ウチは給与・ボーナスを
しっかり払ってるんだから文句言うな」
って言っても,従業員には響きませんよね。
そこで,従業員の不満を発生させない処遇を
実践するために,個々の従業員の価値観に
意識を向けることが必要になります。
従業員の価値観について細かく言い出すと,
それこそ1 人1人違うという話になりますが,
それを言い出すときりがないので,よくある
3 つのパターンを見ていきたいと思います。
■多様化する従業員の価値観
例えば,ある従業員は,
「『お金』さえしっかりもらえれば,
何時間でも残業したい」
と言い,別の従業員は,
「お金よりも,プライベートの『時間』を
しっかり確保したい」
と言い,さらに別の従業員は,
「とにかく『やりがい』のある仕事をしたい」
と言います。
これら従業員の「お金」「時間」「やりがい」
という価値観に対して,
単純に給与を上げるだけでは,
お金を重視していない従業員の満足には
あまりつながらないかもしれません。
では,「時間」や「やりがい」を重視する
従業員の価値観に合った処遇の実践とは
どんなものがあるかというと,例えば,
・「時間」に対しては
労働時間の短縮や残業時間の削減,
休日の充実など
・「やりがい」に対しては
担当業務の見直しや新規業務への挑戦,
適正な評価など
が考えられます。
確かに,従業員それぞれの価値観に合わせて,
企業側が「給与・ボーナス」「労働時間・休日」
「担当業務・適正評価」などで
すべて対応していければいいですが,
これも現実にはなかなか難しいと思います。
では,どうやって価値観に沿った処遇決定に
取り組むかは悩むところですが,
アプローチの仕方も大きく3 つあります。
■価値観を処遇に反映させる3つのアプローチ
アプローチの1 つ目は,
「企業の価値観を重視した処遇決定」です。
このアプローチは,企業の経営理念など,
自社の企業としての価値観を明確にしたうえで,
その価値観に沿った処遇にします。
ざっくり言うと,
社長の想いや企業としてのミッションや
ビジョンを実現していくために
どんな人材を求めるか,その人材は
どんな価値観を持っていてほしいか,
を具体的にイメージし,処遇に反映させます。
このアプローチでは,
短期的には企業の価値観に合わない
従業員の退職を早める可能性がありますが,
長期的には企業の価値観に見合った
従業員を引き寄せる仕組みとしても機能します。
2 つ目のアプローチは,
「従業員の価値観を重視した処遇決定」です。
このアプローチは,
従業員アンケートや個人面談で
全体的な職場の価値観を把握したうえで,
従業員個人別の価値観または
グループ別の価値観に沿った処遇にします。
例えば,
・「お金」を重視する従業員グループは,
きつい,厳しい,拘束時間が長い等の業務を
担当するが,給与・ボーナスの額は高くする
・「時間」を重視する従業員グループは,
給与・ボーナスは少なくなったとしても,
短時間勤務や残業がない働き方をする
・「やりがい」を重視するグループは,
自分の頑張りと給与・ボーナスが連動したり,
評価次第で新たな業務へ挑戦できる環境を
整備する
といった感じです。
このアプローチは,従業員の価値観を
大きく反映させることができるので,
従業員の満足度やモチベーションが高まり,
自社への帰属意識や業務に対する
積極的な取り組みを促進する
仕組みとしても機能します。
3 つ目のアプローチは,
「企業の価値観と従業員の価値観の
マッチングによる処遇決定」です。
このアプローチは,これまでの
2つのアプローチをどちらも行ったうえで,
企業と従業員の価値観の擦り合わせを行い,
自社独自の処遇を確立する方法なので,
企業と従業員の満足度のバランスを
取りやすい方法です。
■従業員の不満を防ぐ処遇のポイント
ここまで,自社の処遇を考える際の
3 つのアプローチをご紹介してきましたが,
企業の現状や求める成果によって
取るべきアプローチは変わってきます。
例えば,企業の方針として,
一体感や規律を重視した組織を目指すなら
「企業の価値観を重視した処遇決定」に,
従業員の意思や希望を尊重するなら
「従業員の価値観を重視した処遇決定」に,
という具合です。
しかし,どのアプローチを取るか以上に
大切なことは,
「自社の処遇決定の背景にある
価値観を説明できるか」
ということです。
多くの企業は,自社がなぜ
その処遇にしているのかを
具体的に説明できていません。
一方,自社の処遇決定の背景にある
価値観を説明できるようにしておくことで,
その処遇は『根拠のある処遇』となり,
自社の風土や強み,魅力が伝わりやすく
なります。
自社の風土や魅力について,
処遇決定の背景という形で押し付けることなく
知ってもらうことで「採用力の強化」や
「離職率の低下」「従業員満足の向上」など
様々なヒトの課題解決につなげましょう。
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